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2025/7/4

税務調査で狙われる「反面調査」とは?交際費の落とし穴と対策

税務調査の中でも、「反面調査」という言葉を耳にしたことはありますか? 

「一体どんな調査なんだろう…」「うちの会社にも関係があるの?」と、初めて聞かれる方もおられると思います。そこで今回は、「反面調査」とは一体何なのか、その基本的な内容とどのような経費の処理が指摘を受けやすいのか、その具体的な「落とし穴」と対策を解説します。

税務調査の反面調査とは?

税務調査の対象となっているあなた(の会社や事業)そのものではなく、あなたの取引先や金融機関といった“第三者”に対して、税務署が行う確認作業を指します。

「なぜ、わざわざ第三者にまで?」と思われるかもしれません。税務署は、あなたが提出した帳簿や書類だけでは取引の実態が掴みにくい場合や、より客観的な証拠が必要だと判断した場合に、この反面調査を通じて事実確認を行うのです。あなたの会社に何か不正がある、と決めつけて行われるわけではないのでご安心ください。

調査官は、取引先などに電話で問い合わせをしたり、郵送で関連書類の提出を依頼したり、時には直接訪問して話を聞いたりします。その際、帳簿や請求書、契約書といった書類の提示を求められることが一般的です。
もし、あなたの会社が協力を求められたり、あるいはあなたの取引先が反面調査の対象になったと聞いたりした場合は、まず冷静に対応しましょう。税務署が知りたいのは、あくまで取引の事実です。尋ねられていないことまで話したり、指示されていない書類をわざわざ見せたりする必要はありません。

反面調査は予告なし

通常の税務調査であれば、原則として事前に調査の日時や場所についての連絡があります。しかし、この反面調査については、残念ながら予告なしに行われることがあるのです。

「えっ、いきなり連絡が来るなんて…!」と驚かれると思います。税務署が予告をしない主な理由は、事前に情報が伝わることで関係者間で口裏合わせをされたり、関連資料が隠されたりするのを防ぎ、より正確な事実を把握するためです。

そのため、ある日突然税務署から取引先に関する問い合わせの電話があったり、あるいは取引先から「税務署から御社との取引について聞かれたんだけど…」と連絡が入る可能性があります。

このように、反面調査は取引の事実関係を明らかにするために行われますが、その過程では、当然ながら帳簿に計上されている経費の妥当性も重要なチェックポイントです。中でも、その範囲や事業関連性の判断が曖昧になりがちな「交際費」は、税務調査において特に重点的に見られやすい項目の一つと言えるでしょう。不適切な処理は、反面調査を含む税務調査で指摘を受ける大きな要因となり得ます。

では、具体的にこの「交際費」とはどのようなもので、税務署に否認されないためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか。

税務調査で気になる「交際費」、どこまでOK?

「この前の会食のおかげで、大きな契約が取れそうだ!」事業をしていれば、取引先との良好な関係を築くための「お付き合い」は欠かせません。もちろん経費ですが、税務調査となると「この交際費、何か言われるかな…」と少し気になる方もおられると思います。

ここでは、税務調査で「交際費」がどう見られるのか、ポイントを押さえましょう。

そもそも「交際費」ってどんなもの?

「交際費」とは、「事業関係者へのおもてなしや贈り物にかかる費用」のことを指します。

例えば、

  • 取引先との食事代
  • お中元やお歳暮、お祝いの品
  • 事務所移転のお祝い金

などがこれにあたります。

大切なのは、「金額の大小」よりも「その支出が、本当に事業のために必要だったのか?」という点です。高額であっても事業への貢献をしっかり説明できれば問題ありません。

なぜ「交際費」は税務署に「狙われやすい」のか?

最大の理由は、「会社の経費」と「社長や社員個人のプライベートな支出」との境界線が曖昧になりやすいからです。

調査官は、「この食事会、本当に仕事の話がメインだった?」「このゴルフ、社長の個人的な楽しみでは?」といった疑問を持つかもしれません。取引先との関係は、時に仕事とプライベートの区別がつきにくいものです。そのため、事業に必要な支出でも、明確に説明できないと個人的な支出と判断される恐れがあります。

とはいえ、「交際費だから」と過度に厳しく追及されるわけではありません。重要なのは、「いつ、誰と、何のために、どこで、いくら使ったのか」を記録し、「これは事業に必要な支出です!」と説明できるようにしておくことです。

反面調査のトリガーと賢い備え

ここでは、反面調査が動き出す主な「キッカケ」と、それに対する具体的な「回避策」をセットで見ていきましょう。

1.  書類の不備・数字の矛盾

日々の業務に追われ、申告書にちょっとした計算ミスがあったり、売上と仕入れの数字がどうにも噛み合わなかったり…。こうした「あれ?」が重なると、調査官は「申告内容は本当に正しいのだろうか?」と疑問を抱き、あなたの会社の資料だけでは事実の裏付けが取れないと判断すれば、取引先に確認の手を伸ばす可能性があります。

日頃からの書類整理が最大の防御

領収書や帳簿、契約書といった日々の取引の記録を、きちんと整理し、いつでも取り出せる状態にしておくことです。これが、あなたの会社の「潔白を証明する強力な盾」になります。「これだけ資料が揃っていれば、取引先に聞くまでもないな」と調査官に思わせることができれば、反面調査のリスクはぐっと下がります。

2. 所得隠しや虚偽申告の疑念

売上の一部を意図的に除外していたり、実際にはない経費を計上したり…。そんな「所得隠し」や「虚偽申告」の疑いが浮上すると、調査官はあなたの会社の帳簿だけでなく、取引先の帳簿と照合したり、担当者に直接話を聞いたりして、お金の流れを徹底的に洗い出そうとします。その結果、取引先に「〇〇社とのこの取引について、詳しくお聞かせいただけますか?」と連絡される可能性が高まるのです

「隠し事はなし!」誠実なコミュニケーションが鍵

税務調査の本来の目的は、あなたの会社が正しく税金を計算し、納めているかを確認することです。「不正ありき」で見ているわけではありません。だからこそ、調査官からの質問には、包み隠さず、誠実に答える姿勢が何よりも大切です。「この取引の背景は?」「この経費の目的は何ですか?」といった疑問に対し、真摯に説明し、適正な経理処理を行っていることが伝われば、調査はスムーズに進み、疑念も晴れやすくなります。

3. 無申告という大きな落とし穴

あなたの取引先が税務署に提出する支払調書などから、「おや、A社からの入金記録はあるけれど、A社からの申告が見当たらないぞ?」といった形で、無申告の事実が明るみに出ることがあります。無申告の場合、そもそも帳簿や領収書がきちんと保管されていないケースも多く、あなたの会社から直接情報を得るのが難しいため、税務署は取引先に「A社との取引内容を教えてください」と確認する反面調査に踏み切ることに繋がるのです。

適正な申告・納税が大前提

大前提ですが、事業を行っているのであれば、定められた期限内にきちんと確定申告を行い、納税する義務があります。もし、何らかの理由で申告が漏れていた場合は、速やかに税理士に相談し、適切な対応をとることが、問題を最小限に抑える道です。

4. 経費の使い方への厳しいチェック

調査官が「この領収書の内容は、どうも納得がいかないな」と判断すれば、その支出の相手方である取引先などに「この品物を受け取ったのは事実ですか?目的は何でしたか?」といった形で、事実確認の連絡をすることがあります。

経費の目的を明確に説明責任を果たす

「いつ、誰と、何のために、どこで、いくら使ったのか」をきちんと記録し、いざという時に「これは事業に必要な支出です!」と自信を持って説明できるようにしておくことが肝心です。

5.  非協力的な態度は疑いを深めるだけ

焦りや不安から、調査官に対して「その資料は出せません」「質問には答えられません」といった非協力的な態度を取ってしまうと、調査官は、「何か都合の悪いことでもあるのだろうか?」「何か隠しているのでは?」と、かえって疑いを深めてしまいます。あなたの会社から十分な情報や協力が得られないと判断されれば、税務署は事実関係を明らかにするために、取引先への反面調査を行うしかありません。

「専門家と一緒に!」顧問税理士は頼れるパートナー

税務調査には、あなたの会社のことをよく知る顧問税理士に立ち会ってもらうことができます。税務調査の経験が豊富な税理士は、調査官が「何を知りたがっているのか」を的確に読み取り、専門家の視点から分かりやすく、かつ説得力をもって情報を伝えることができます。調査官も、税理士から納得のいく説明が得られれば、わざわざ手間のかかる反面調査を行う必要性を感じにくくなるはずです。税務調査の連絡が来たら、一人で抱え込まず、まずは顧問税理士に相談してみてください。

まとめ

今回は、税務調査の「反面調査」の概要と、指摘を受けやすい「交際費」の適切な処理方法について解説しました。反面調査は、予告なしに行われる可能性がありますが、あくまで客観的な事実確認が目的であり、日頃から正確な帳簿付けと証拠書類の保存を心がけていれば、過度に恐れる必要はありません。

ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。

投稿者プロフィール

林 大樹(はやし ひろき)
林 大樹(はやし ひろき)
慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。