2025/7/3
税務調査に備えよう!飲食店が見られる項目と慌てないための準備ガイド
「税務調査」と聞いて、ドキッとする飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか?
日々の忙しさの中で、「税金のことまで手が回らない…」そんな時に知っておきたい税務調査の基本から対策までを今回は解説します。
目次
税務調査とは?
税務調査とは、申告された税金の内容が正しいかを税務署などが帳簿等で確認する手続きです。国税庁はこれを「申告内容に誤りが認められた場合や、申告義務がありながら申告していなかったことが判明した場合に、是正を求めるもの」と定義しており、適正な申告・納税の「確認」が主目的です。
飲食店経営では、主に以下の税金が関わります。
- 消費税(開業後や売上規模により免除あり)
- 印紙税
- 固定資産税(土地・建物所有の場合)
- 源泉所得税・特別徴収住民税(従業員雇用時)
これらに加え、事業形態で納税すべき税金が異なります。
個人事業の場合 |
法人の場合 |
所得税 |
法人税 |
個人住民税 |
地方法人税 |
個人事業税 |
法人住民税 |
復興特別所得税 |
法人事業税 |
※法人でも代表者個人には所得税等の納税義務があります。
税務調査は、これらの税金が適切に計算・納付されているかを確認するために行われます。日々の正確な記録と期限内の納税があれば、過度な心配は不要です。通常、税務調査は事前通知があり、正当な理由があれば日程調整も可能です。
税務調査について下記記事もご参照ください。
個人事業主に対する税務調査が来やすい時期とは?対象になりやすい特徴も解説!

飲食店への税務調査〜調査官はココを見る!具体的な流れとチェックポイント~
1.調査対象はどう決まる?
税務署は、無作為に調査先を選ぶわけではありません。申告内容や業界データを分析し、「おや?」と目を付けたお店をリストアップします。本格調査の前に、お店の様子をそっと確認する「事前調査」を行うこともあるのです。
- 外観調査
調査官は、お店の立地や外観、客の入り、出前の有無などを外から観察します。 - 内観調査
時には、調査官が一般客として来店。店内の席数や混雑具合、従業員の動き、レジの使われ方(しっかり打っているか等)、メニューや人気商品をチェックします。
これらの情報と申告内容を照らし合わせ、税務署は本格調査に踏み切るか最終判断を下します。
2.「いよいよお店へ…」臨場調査の実態とチェックポイント
「臨場調査」では、調査官が実際に店舗を訪れます。
① 調査官は一人じゃない?
飲食店の調査に、調査官が一人で来ることは稀です。通常2名以上、時には国税局チームが加わることもあります。その場合、事前連絡なしに調査が始まることもあるため、心構えは必要かもしれません。
② お店の「今」を徹底チェック! 現況調査と主な確認点
調査官がまず行うのが「現況調査」です。レジの中身、パソコンのデータ、机の引き出し、ロッカーなどを直接確認し、「ここに隠された売上データや、申告していない通帳があるかもしれない」という視点で、証拠となりそうなものを探します。この時、特に注目されるのは以下のポイントです。
- 現金の管理
「毎日の締め作業で、レジのお金と帳簿の金額、ちゃんと合わせていますか?」という点が厳しく見られます。帳簿上の現金残高と、実際にレジにある現金の額が大きくズレている場合、「どうしてこんなに違うんですか?」と、その原因を徹底的に聞かれることになります。 - 売上高のチェック
伝票や領収書の控えと、売上帳などの帳簿を一つひとつ照らし合わせ、間違いがないかを確認し、時には事前調査で調査官自身が客として支払った金額が、きちんと売上として計上されているか、というピンポイントなチェックもあります。また、「おしぼりや割り箸の使用量から計算したおおよその客数と、客単価を掛け合わせた売上予測額と、実際に申告されている売上額が大きくかけ離れている」なんて場合は、「何かおかしいのでは?」と、さらに深掘りされる可能性があるため、ご注意ください。 - 人件費の内訳と源泉徴収
「本当にその人に給料を支払っていますか?架空の人件費が紛れ込んでいませんか?」という点や、「給料から天引きすべき源泉所得税を、きちんと徴収して納めていますか?」という点が重要なチェック項目です。 - 仕入れの状況と在庫
「仕入れた食材の管理は適切か?期末の在庫は正しく把握できているか?」といった点も、調査官の鋭い視線が注がれるポイントです。仕入れの伝票や帳簿をつぶさに確認し、決算時の棚卸しが正確に行われ、在庫が資産としてきちんと計上されているかを徹底的にチェックされるでしょう。時には、実際に厨房や倉庫に立ち入り、「もう使えないデッドストックになっている食材が、帳簿から漏れていないか?」といった現物確認も行われます。 - 交際費の内訳
「取引先との会食や贈答品など、交際費として計上している経費の内容は適切ですか?」という点も細かく見られます。「社長個人の食事代や、事業とは関係のないプライベートな支出が紛れ込んでいませんか?」といった点をチェックし、あくまで事業に必要な経費かどうかが重要です。
3.「書類から見えてくるものはないか?」帳簿調査
現況調査後、日を改めて行われるのが「帳簿調査」です。調査官は、皆さんが準備した売上帳、仕入帳、経費帳、契約書等をもとに、日々の取引の正確性、証拠書類との矛盾、経費の不自然な点などを確認し、経営実態を把握しようとします。
4.「もし帳簿がなかったら?」 推計課税という方法
万が一、売上に関する帳簿やデータがほぼない場合、税務署は「推計課税」という手段に出ることがあります。これは、直接証拠がない場合に、仕入量や経費、同業他社の平均利益率などから「これくらいの売上・所得があったはず」と合理的に推計し税額を決定する方法です。
ただし、これには「国内法人・個人であること」「更正・決定の場合のみ」「青色申告者には原則不可(適用の際は承認取消が必要)」といったルールが存在します。時に調査官から「同業他社より粗利率が低いから修正申告を」といった指導を聞くこともありますが、正規の推計課税とは異なります。結局のところ、適切な記録や書類が提示できないと、青色申告承認取消のリスクもありますので、日々の記帳と書類整理が、何よりの防御策と言えるでしょう。

飲食店の税務調査に慌てないために! ~今からできる3つの備え~
1.普段からの準備が何よりの「お守り」
「税務調査で大変なのは、当日までに書類を完璧に揃えること、と感じませんか?」もし事前連絡なしに調査官が来たら…パニックになりかねません。
そうならないために経営者ができる一番の対策は、日々の記帳を正確に行い、関連書類をきちんと整理・保管することです。「忙しくて後回しに…」となりがちですが、この地道な作業こそが、いざという時の「大丈夫」という自信に繋がります。
2.「魔が差す」前に知っておきたい合法的な節税の力
目の前の現金に、つい良くない考えがよぎるかもしれません。しかし、その誘惑は禁物。税務署は調査のプロです。それよりも、税理士に相談し、法律で認められた方法で賢く節税する道を選びませんか?
これまで特に対策をしてこなかったお店なら、使える控除の活用や経費計上の見直しだけでも、大きな効果が期待できることもあります。「こんな方法があったのか!」
3.「税務調査に強い」税理士はあなたの味方です
税務調査では、税務署との交渉が必要になる場面もあり、調査の進め方や最終的な納税額は、どの税理士に頼むかで大きく変わる可能性があります。
特に現金商売が多く、業界特有の事情がある飲食店だと、いざという時皆さんの立場を理解し、的確なアドバイスをくれ、税務署との間に入ってくれる存在は心強いはずです。

まとめ
今回は、飲食店経営者の皆さまが気になる「税務調査」について、その基本から具体的な流れ、そして対策まで解説してきました。税務調査の本質は「正しく税金を納めているかの確認作業」です。大切なのは、問題を先送りにせず、日頃から「備える」意識を持つことです。その上でまだ不安な点や具体的な相談事項があれば、一度税理士などの専門家に話を聞いてみるのも一つかと思います。ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。
投稿者プロフィール

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慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。
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