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2025/6/28

自己資本と純資産の違いとは?経営に役立つ5つの指標も徹底解説

経営者や財務担当者の皆様にとって、会社の「本当の体力」を把握することは、日々の意思決定に必要だと思います。「うちの会社、財務的には大丈夫だろうか?」「もっと成長するためには、どこに着目すればいいんだろう?」そんな疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、自己資本と純資産に着目し、財務状況を理解する上での基本事項をご説明します。

自己資本とは?他人資本との違い

会社の財務状況、どこから見れば「本当の体力」が分かるのでしょうか?

その鍵を握るのが「自己資本」です。

会社が持つ現金や売掛金、機械設備などをまとめて「資産」と呼びます。これは、会社が事業を行うために保有している財産全体を指し、貸借対照表(バランスシート)の左側に記載されます。ここには、事業で得た利益だけでなく、銀行からの借入金なども含まれています。

一方、貸借対照表の右側には、これらの資産をどのようなお金で調達したかを示す「負債」と「純資産」が記載されます。「負債」とは、銀行への返済や仕入先への支払いなど、いずれ返さなければならないお金のことです。

そして、この総資産から「負債」を差し引いたもの、これが会社の純粋な持ち分であり、「純資産」と呼ばれます。この純資産は、返済の必要がなく、会社の安定性を支える重要な資金源となります。

この純資産は、さらにその性質によって「自己資本」と「他人資本(※実質的には負債の一部として扱われることも多いですが、ここでは資金調達の性質としての対比で記載)」に概念的に分けられることがあります。より正確には、純資産の中核を成すのが「自己資本」であり、経営分析の場面で特に注目されます。

自己資本

他人資本(外部資本)

返済不要、まさに「自分のお金」

いずれ返済が必要、「他人からのお金」

創業時の出資金(資本金)、これまでの利益の蓄積(利益剰余金)など

金融機関からの借入金(運転資金や設備投資)、仕入代金の未払い(買掛金)など

「自己資本」とは、株主からの出資金や、会社が事業で生み出してきた利益の蓄積のことです。返済の必要がなく、会社の安定性を支える土台となります。

一方の「他人資本」は、銀行からの借入金や買掛金など、将来返済する約束で外部から調達した資金です。事業運営には不可欠な場合もありますが、「借りているお金」という認識が重要となります。

会社の総資本のうち、「自己資本」が占める割合を「自己資本比率」と言います。この比率が高いほど、借入に頼らない安定した経営と判断できるでしょう。貸借対照表(バランスシート)では、左側に「資産」(財産を何に使っているか)、右側にその調達源である「負債」と「純資産(≒自己資本)」が記載されており、この構成から企業の財務の健全性が見えてくるのです。

純資産とは?自己資本との違い

貸借対照表の「純資産の部」が会社の純粋な持ち分であり、その中核を成すのが「自己資本」であると述べました。では、会計書類に表示される「純資産」と、経営分析で重視される「自己資本」は、厳密にはどのように異なり、純資産はどのような項目で構成されているのでしょうか? この違いをスッキリさせましょう。

「純資産」は、貸借対照表の表示区分であり、総資産から負債を差し引いたものです。これには、株主からの出資金や利益の蓄積だけでなく、会計上の評価・換算差額なども含まれます。

純資産はどんなもので構成されているか、主な項目を表で見てみましょう。

  • 株主資本
    • 資本金:創業時や増資で株主が出した、事業の元手。
    • 資本剰余金:出資金のうち、資本金としなかった部分。
    • 利益剰余金:稼いだ利益から税金や配当を払い、社内に貯めたお金(内部留保)。
    • 自己株式:会社が買い戻した自社株(純資産を減らす効果)。
  • 株主資本以外
    • その他の包括利益累計額(評価・換算差額等):保有株の値上がり益(未実現)や、海外事業の円換算差額など。
    • 新株予約権:将来、決まった価格で新しい株を買える権利(ストックオプションなど)。
    • 非支配株主持分:グループ会社の場合、子会社の純資産のうち親会社以外の株主が持つ分。
    • 自己株式:会社が買い戻した自社株(純資産を減らす効果)。
    • その他の包括利益累計額(評価・換算差額等):保有株の値上がり益(未実現)や、海外事業の円換算差額など。
    • 新株予約権:将来、決まった価格で新しい株を買える権利(ストックオプションなど)。
    • 非支配株主持分:グループ会社の場合、子会社の純資産のうち親会社以外の株主が持つ分。

「株主資本」が純資産の中核を成します。そして、一般的に経営分析で使われる「自己資本」とは、この「株主資本」に「その他の包括利益累計額(評価・換算差額等)」を加えたものを指します。

つまり、純資産の部には「新株予約権」や「非支配株主持分」も含まれますが、これらは通常、自己資本には含めません。ただし、中小企業ではこれらの項目が小さいか存在しないことも多いため、その場合は実務上「純資産の部の合計額 ≒ 自己資本」と捉えることもあります。

純資産の中でも特に「利益剰余金」は、会社が創業以来どれだけ利益をコツコツと貯めてきたか、いわば「会社のへそくり」であり、この金額が大きいほど財務は安定し、将来への備えも安心です。逆に、ここがマイナス(欠損)の状態は、「債務超過」の危険信号かもしれません。貸借対照表で純資産、特に利益剰余金を見ることで、あなたの会社の「これまでの頑張り」と「現在の体力」が手に取るように分かるのです。

純資産から経営状況を読み解くための指標

ここでは、経営判断に役立つ代表的な5つの指標を見ていきましょう。計算式と合わせて、各指標が「何を教えてくれるのか」を掴めば、自社の状況をより深く理解できるかと思います。

※紹介する数値目安は一般的であり、業種や企業規模で異なります。

自己資本比率

これは、会社の総資産のうち、返済不要の「自分のお金」(自己資本)がどれだけあるかを示します。企業の財務的な安定度、いわば「足腰の強さ」を測る指標です。

計算式:自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資本(総資産) × 100

比率が高いほど経営は安定していると言えます。一般的に30%〜40%以上が望ましいとされますが、業種特性も考慮しましょう。

自己資本利益率(ROE)

株主が出したお金(自己資本)を使って、どれだけ効率よく利益を生み出せているかを見ます。会社の「稼ぐ効率」を測る指標です。

計算式:自己資本利益率(ROE)(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

ROEが高いほど、資本を有効活用して利益を上げています。10%〜15%が目安とされ、投資家も注目しています。

負債比率

「負債比率」は、自分のお金(自己資本)に対して、どれくらいの負債(借金)を抱えているかを示します。財務リスクの度合いを測るのに役立ちます。

計算式:負債比率(%) = 負債総額 ÷ 自己資本 × 100

比率が低いほど安全。100%以下なら、自己資本で全負債を返せる計算になり、安心材料の一つです。

固定比率

工場や機械などの「固定資産」をどれだけ返済不要の自己資本でまかなえているかを見るのが「固定比率」です。長期的な支払い能力の安定性をチェックします。

計算式:固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

100%以下、つまり固定資産の全てを自己資本で買えている状態が最も安定的です。

固定長期適合率

「固定長期適合率」は、固定資産を、自己資本に加えて返済まで期間の長い借入金(固定負債)まで含めた「長期的な安定資金」で、どれだけまかなえているかを示します。資金繰りの安全性をより詳しく見る指標です。

計算式:固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債) × 100

この比率が100%を下回っていれば、固定資産の購入が長期安定資金でカバーされていると判断でき、安心感が増します。

これらの指標を使って自社の財務状況を分析すると、新たな気づきがあるかもしれません。ぜひ、お手元の決算書から数字を拾って計算してみてください。

まとめ

今回は、貸借対照表(バランスシート)の読み解きの第一歩として「自己資本」と「純資産」というキーワード、そしてそれらを用いた基本的な財務指標について解説してきました。今回ご紹介したものは、あくまで数ある分析手法の一部に過ぎません。自社の状況をより深く、多角的に分析するには当社のような税理士にご相談いただくのも有効な手段です。ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。

投稿者プロフィール

林 大樹(はやし ひろき)
林 大樹(はやし ひろき)
慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。