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2025/6/27

資本金1円での株式会社の作り方とは?一般的な会社との違いを解説

「少ない資金で、できるだけリスクを抑えて起業したい…」

このように願いながらも「会社設立なんて、結局まとまったお金がないと無理なんでしょ?」とためらっている方も多いかと思います。

実は、起業を取り巻く常識は変わりつつあるのです。

今回は、「本当にそんな少額で会社が作れるの?」「具体的にどんなメリットや注意点があるの?」といった疑問や不安に回答します。

2006年の会社法改正によって1円で株式会社が作れる?

2006年の会社法改正で、その常識は大きく変わりました。今では理論上、たった1円からでも株式会社を設立できるようになったのです。

かつては最低でも1,000万円の資本金が求められ、これが「少ない資金で挑戦したい」と考える多くの人にとって大きな壁となっていました。しかし国は、もっと多くの人が新しいビジネスに踏み出しやすくなるよう、この規制を撤廃したのです。

では、そもそも「資本金」とは何でしょう? 

これはあなたが会社を動かしていくための「事業の元手」。例えば、あなたがWebサイト制作のスキルを活かしてフリーランスから法人成りする場合、PCやソフトウェア購入費、当面の活動資金などが資本金です。そして、この資本金の額は、取引先や金融機関があなたの会社の信用度を測る一つの目安にもなります。

ただ、「1円で会社を作れるなんて、本当に大丈夫?」という疑問も湧いてきますよね。その注意点については、この後の段落で詳しく見ていきましょう。

資本金1円の会社と一般的な会社では何が違うの?

一番分かりやすい違いは、もちろん「会社設立時にあなたが用意する事業の元手(資本金そのもの)の金額」ですが、実質的な違いとして、以下の3つの点が挙げられます。

会社の「体力」や「信用力」の見え方

  • 資本金1円の場合
    「少ない資金ですぐに始められる!」という大きなメリットがある一方で、取引先や金融機関からは「この会社、本当に大丈夫かな?事業を継続できる体力があるのかな?」と、少し慎重に見られてしまう可能性があります。特に、大きな取引を始めたい時や、銀行から融資を受けたいと考えた時、資本金の少なさが一つのハードルになることも。
  • ある程度の資本金がある場合
    「しっかり準備して事業を始めるんだな」という印象を与えやすく、相対的に信用を得やすい傾向があります。これは、会社に何かあった時のための「体力」が一定程度ある、と見なされるためです。

事業スタート直後の「運転資金」の余裕度

  • 資本金1円の場合
    設立後すぐに売上が立たないと、事務所の家賃や仕入れ費用、広告費といった経費の支払いが厳しくなる可能性があります。まさに、自転車操業のような状態に陥りやすいのです。
  • ある程度の資本金がある場合
    事業が軌道に乗るまでの数ヶ月間、たとえ赤字が続いたとしても、資本金を取り崩して事業を継続できる「バッファ」になります。安心して事業の立ち上げに集中できる期間が生まれるわけです。

特定の事業を始めるための「許認可」の要件

実は、事業の種類によっては、法律で「最低これだけの資本金がないとダメですよ」と定められている場合があります。例えば、建設業や人材派遣業など、特定の許認可が必要なビジネスを始めたいと考えているなら、資本金1円ではそのスタートラインにすら立てないケースがあるのです。

このように、資本金1円での設立は「できる」という点では魅力的ですが、それがあなたの事業にとって本当に「最適」かどうかは、また別の話です。設立のしやすさだけでなく、その後の事業運営や、外部からどう見られるか、といった点も踏まえて、あなたにとってベストな資本金の額を考えることが大切になります。

資本金1円で株式会社を作る際の注意点

「資本金1円で会社設立!」その手軽さは魅力的ですが、その選択にはいくつか知っておくべき「壁」が潜んでいます。スムーズに事業を進められるよう5つの注意点を具体的に見ていきましょう。

法人口座の開設に影響する?

会社のお金を管理する「法人口座」。資本金が1円など極端に少ないと、銀行は「この会社、大丈夫?」と慎重になり、口座開設の審査が厳しくなることがあります。悪用を防ぐため、銀行も警戒しているのです。口座がないと、お金の管理も取引先への印象も少し心配です。

取引先からの信用に影響する?

資本金が「1円」だった場合、「事業を続けられる体力があるのかな?」と不安に感じられるかもしれません。資本金は会社の「体力」を示すバロメーターです。金額が少ないと、新しいビジネスチャンスを少し遠ざける可能性もあります。

融資を受けたい!でも銀行は…?

事業を大きくするには資金が必要です。しかし資本金1円では、金融機関はあなたの会社の返済能力を低く見られるかもしれません。結果、融資の審査が厳しくなることにも繋がります。起業家向け融資でも、ある程度の自己資金(資本金含む)が条件になることが多いのです。

業種によって許認可が下りにくい

レストランや建設業など、事業によっては国や自治体の「許認可」が必要です。そして、この許認可には「最低これだけの資本金が必要」という条件が付いている場合があります。例えば特定建設業は資本金2,000万円以上です。「やりたい事業が資本金の壁で諦める…」なんてことにならないよう事前に確認しましょう。

従業員の採用(雇用)が難しくなる

事業が大きくなり、従業員を雇いたいと思っても、資本金1円の会社では「この会社、大丈夫?」と求職者がためらうかもしれません。働く側も安心できる会社を選びたいものです。資本金が少ないと、優秀な人材を惹きつけるのが難しくなる可能性があります。

まとめ

「資本金1円での株式会社設立」について、その可能性から具体的な違い、そして見落としがちな注意点までご紹介しました。確かに、資本金1円での起業は、スタートのハードルを劇的に下げてくれる魅力的な選択肢です。しかし、それが「誰にとっても最適な方法」というわけではありません。あなたの事業内容、将来の展望、そして何よりも「どんな会社にしていきたいか」という想いによって、ベストな資本金の額は変わってきます。

ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。

投稿者プロフィール

林 大樹(はやし ひろき)
林 大樹(はやし ひろき)
慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。