2025/6/26
合同会社とは?設立後にやることと法人成り時の廃業手続きについて
「法人化」という次のステップを考え始めたものの、どの会社形態を選べばよいか、手続きは複雑ではないかと、気になる点も多いのではないでしょうか。
そんな時、ぜひ知っておいてほしいのが「合同会社」という選択肢です。今回は、合同会社とは何か、設立から設立後の手続き、そして個人事業主からの移行に必要な廃業手続きまで法人化をスムーズに進めるためのポイントを解説します。

目次
合同会社とは?メリットや手続き
合同会社は、2006年から始まった比較的新しい会社の形です。実は、GoogleやAmazonの日本法人もこの合同会社で、株式会社に次いで多く選ばれています。
大きな特徴は、出資した人がそのまま経営者になること。つまり、あなたが会社のオーナーであり、経営の舵取りができます。
合同会社設立のメリット
主なメリットは以下の通りです。
- 設立費用を抑えられる
株式会社設立に必要な定款認証手数料(約5万円)が不要で、登録免許税も最低6万円からです。株式会社と比べて初期コストをぐっと抑えられます。
- 設立手続きがシンプル
株式会社に比べ、準備する書類も少なく手続きも比較的簡単です。
- 経営の自由度が高い
利益の分け方も出資額に縛られず、社員間の話し合いで柔軟に決められます。役員の任期もないため、更新手続きの煩わしさもありません。
- 責任は出資額の範囲内(有限責任)
万が一、会社が負債を抱えても、あなたの責任は出資した金額までが対象です。個人事業主の無限責任とは異なり、安心して事業に挑戦できます。
- 社会的信用度がアップ
「法人」になることで、取引先や金融機関からの見え方が変わり、ビジネスチャンスが広がることも期待できます。
合同会社の設立手続き
合同会社設立の主なステップは以下の4つです。
参照:法務省「合同会社の設立手続について」
1.会社の基本情報を決める
会社の「骨格」となる情報を決定します。これらは定款にも記載される重要事項です。
- 商号: 会社名です。屋号を引き継いでも新たに考えてもOK。
- 事業目的: どんな事業を行うのかを記載してください。
- 本店所在地: 会社の住所。自宅でもオフィスでも構いません。
- 資本金額: 事業の元手となるお金です。
- 社員構成: 誰が出資し経営を行うか(代表社員、業務執行社員など)。
- 事業年度: 会社の会計期間。決算月は自由に設定できます。
2.定款(ていかん)の作成をする
基本情報に加え、公告方法、社員の責任(有限責任)、任意退社規定、損益分配方法を記載します。定款は、会社の基本的なルールを定めた、いわば「会社の憲法」です。
3.出資金の払込みをする
定款作成後、設立登記の申請前に、定めた資本金を払い込みます。登記時には、この払込みを証明する「払込証明書」が必要です。この払込証明書は、あなたが作成します。出資金は、代表社員となるあなたの個人口座へ振り込み、その通帳コピーを証明書に添付します。
4.設立登記の申請をする
出資金の払込みが終われば、いよいよ法務局へ設立登記の申請です。法務局が申請書を受理した日が会社の設立日となります。登記書類は正確な記載が求められます。

会社設立後のやること一覧
登記という大きな山を越えましたが、法人として事業を本格始動させるには、もう少し準備が必要です。個人事業主の時とは異なる手続きを一緒に見ていきましょう。
1.会社の「顔」となる口座を開設
あなたの会社の銀行口座を作りましょう。個人のお金と会社のお金をきっちり分けるのは、経理の基本。取引先からの信頼にも繋がります。法人口座は審査に少し時間がかかる(1〜2週間ほど)ので、登記が終わったら早めに銀行へ行きましょう。
銀行へ持っていくとスムーズなものリスト
- 会社の登記簿謄本(法務局でゲット!)
- 設立時に作った定款のコピー
- 会社の実印
- あなたの印鑑証明書と身分証明書
- (あれば)事業計画書など、あなたのビジネスをアピールできるもの
「どんな会社なんだろう?」銀行の担当者も興味津々のはず。あなたの事業への情熱を伝えましょう!
税務署へ「法人になりました!」の届出
会社として税金を納めるため、いくつかの書類を税務署へ提出します。
- 法人設立届出書(設立から2ヶ月以内):会社の「はじめまして」のご挨拶です。
- 青色申告承認申請書(設立から3ヶ月以内 or 初回決算日の早い方):個人事業主の時にもお世話になった方も多いのでは?法人でも青色申告のメリットは大きいです。
- 源泉所得税の納期の特例承認申請書:給与を支払う人が少ない場合、源泉税の納付を年2回にまとめられる便利な制度。
- 給与支払事務所等の開設届出書:従業員へ給与を支払うなら提出しましょう。
管轄税務署は国税庁HPで検索してみてください。書類もHPからダウンロードできます。
地元の役場へも届出
国だけでなく、都道府県や市区町村にも税金を納めます。あなたの会社がある市区町村役場へも「法人設立届」などを提出しましょう。様式は自治体によって違うので、事前にホームページなどでご確認ください。
社会保険の手続きは年金事務所で
法人になると、あなた自身も、従業員も社会保険(健康保険・厚生年金)で行います。
- 新規適用届(設立から5日以内)
- 被保険者資格取得届(社会保険に入る人が出たら5日以内)
- 被扶養者(異動)届(扶養家族がいる従業員が入ったら5日以内)
書類は日本年金機構のHPからダウンロードできます。
従業員を雇うなら、ハローワークと労基署へも
もし従業員を雇うなら、さらに2ヶ所への届け出が必要です。
- ハローワーク
従業員の雇用保険の手続きです。「適用事業所設置届」「被保険者資格取得届」などを提出します。
- 労働基準監督署
従業員の労災保険などの手続きです。「労働保険 保険関係成立届」「概算保険料申告書」などを提出します。
提出期限がそれぞれ違うので、従業員を雇うタイミングで確認しましょう。
個人事業主から法人成りした場合の廃業手続き
個人事業の「店じまい」の手続きを忘れずに行いましょう。
税務署へ3つの手続き
税務署へ以下の手続きを行います。
- 「青色申告、やめます!」の届出(所得税の青色申告の取りやめ届出書)
個人事業主時代、節税のために頑張った青色申告。法人になったら、個人としての青色申告はもう使いません。この届出は、青色申告をやめる年の翌年3月15日までに提出しましょう。ただし、個人事業を辞めた日までの分は、これまで通り確定申告が必要です。消費税を納めていた方は、そちらの申告も忘れずに。
参考:国税庁HPで「所得税の青色申告の取りやめ手続」 - 「個人事業、廃業します!」の届出(個人事業の開業・廃業等届出書)
「個人事業主としては、これでおしまいです」という正式なサイン。これは、廃業してから1ヶ月以内と少し期間が短く設定されています。
参考:国税庁HPで「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」 - 「消費税の事業、終わります!」の届出(事業廃止届出書)※該当する方のみ
個人事業で消費税を納める「課税事業者」だったなら、この届出も必要です。「個人としての消費税の申告はこれで終わりです」と税務署に伝えます。期限は特にありませんが、忘れないうちに早めに出しておくと安心です。
参考:国税庁HPで「事業廃止届出手続」
個人事業の「財産」と「借金」どうやって新しい会社へ?
個人事業で使っていたパソコンや機械、あるいは抱えていた借入金など、これらを新しく作ったあなたの合同会社へ引き継ぐ必要があります。
主な方法は以下の通りです。
- 売る(売買契約):あなた個人からあなたの会社へ時価で「売却」するイメージ。
- 引き受ける(債務引受契約):あなた個人の借金を、あなたの会社が「肩代わり」するイメージ。
- 出資する(現物出資):財産を、会社の「資本金」として提供するイメージ。
- まるごと渡す(事業譲渡契約):個人事業全体を、会社へ「譲り渡す」イメージ。
「どれがうちの会社に合ってるんだろう?」と迷ったら、税理士に相談するのが一番です。ちなみに、事務所などを無理に会社名義にせず、個人で持ち続けて会社に貸すという方法もあります。
地元の役場へも「個人事業、やめました」の報告を
税務署だけでなく、都道府県税事務所など、あなたの事業所があった地方自治体へも「個人事業をやめました」という報告(「事業開始(廃止)等申告書」など)が必要です。これは主に個人事業税に関する手続きです。
廃業した年の個人事業税は翌年納めますが、ちょっとした節税ポイントも。その年に納める見込みの個人事業税額を、廃業した年の経費として計上できる場合があるんです。

まとめ
今回は合同会社とは何か、その設立メリットや具体的な手続き、さらには設立後の「やること」、そして個人事業主からの法人成りにおける廃業手続きまでご紹介しました。法人化、特に合同会社の設立は、確かにいくつかのステップを踏む必要があります。しかし、一つひとつの手続きの意味を理解し、計画的に進めていけば、決して難しいものではありません。
もちろん、手続きの過程で迷うこともあるかもしれません。そんな時は、税理士や司法書士といった専門家の力を借りることも、スムーズな法人化を実現するための賢い選択です。
ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。
投稿者プロフィール

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慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。
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