2025/6/25
税務調査で住民税はどう変わる?個人事業主・法人の修正申告と注意点を解説
「まだ事業規模も小さいし」「売上だってそこまで…」そう思っていても、税務調査はいつ、誰のもとに訪れるか分かりません。しかし、闇雲に怖がる必要はありません。どのような状況が税務署の注目を集めやすいのか。そして、もし調査の結果、申告内容に修正が必要になった場合、その影響は所得税や法人税だけでなく、私たちが毎年納めている住民税にも及ぶことがあります。今回は、税務調査の対象となる可能性のあるケースから、調査当日に慌てないための具体的な注意点や対策までを解説します。

目次
「もしかして私も?」個人が税務調査の対象になるケースとは?
個人事業主、副業を持つ会社員、中小企業の経営者の方にとって、税務調査は無視できない問題です。確定申告をしていれば誰もが対象となる可能性がありますが、特に注意が必要な状況があります。ご自身のケースと照らし合わせてみましょう。
売上が1,000万円を超えている
売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じるため、税務署の注目度が変わる一つの節目です。免税事業者から課税事業者へ移行するタイミングであり、申告内容の確認がより慎重になる傾向があります。また、長年1,000万円にわずかに満たない申告を続けていると、消費税負担を避けるための調整を疑われる可能性も考慮すべきです。売上が増えれば確認点も多くなるため、日頃からの帳簿整理が重要となります。
副業所得が20万円以上ある
副業で得た所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えると、会社員でも確定申告が必要です。少額の申告漏れでも調査が入ったケースは実際に報告されています。注意したいのは、副業所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要となる点です。この住民税の申告漏れが、税務署の目に留まり、調査に繋がることもあり得ます。
相続を受けて相続税を申告した
相続により財産を取得し、相続税の申告をした場合も、税務調査の対象となることがあります。申告内容に誤りや漏れがないか、故人の預貯金や不動産などが確認され、一般的には相続税申告から1〜2年後に行われることが多いようです。調査では、故人の財産形成の経緯や家族構成、生前贈与の有無などが質問されることがあります。これらは適正な申告を確認するために必要な手続きです。

「個人事業主」「法人」それぞれに税務調査が行われた時の住民税への影響
所得税や法人税の修正は、住民税にも影響します。そして、個人事業主と法人では、その後の対応が少し異なります。それぞれのケースで住民税がどう変わり、どんな手続きが必要になるのかを見ていきましょう。
個人住民税の計算方法
個人事業主が納める個人住民税は、主に前年の所得に応じた「所得割」と、所得にかかわらず一定額が課される「均等割」で決まります。税務調査で所得の申告漏れが指摘され、修正申告で課税所得が増えれば、この「所得割」が再計算され、結果的に納める住民税も変動する仕組みです。
法人住民税の計算方法
法人が納める法人住民税は、主に国に納める法人税額をもとに計算される「法人税割」と、会社の規模などに応じて一律に課される「均等割」で構成されます。修正申告で法人税の納税額が増えれば、連動して法人住民税の「法人税割」も増額されます。
それぞれの修正申告したときの対応
所得税や法人税の修正申告後、住民税の手続きは個人事業主と法人で異なります。
- 【個人事業主の場合】
個人事業主の場合、所得税の確定申告は住民税の申告も兼ねています。そのため、税務署に所得税の修正申告書を提出すれば、その情報は自動的に市区町村に伝わり、住民税も修正されます。したがって、改めて市区町村へ住民税の修正申告書を出す必要は基本的にありません。
ただし、修正内容が反映された新しい住民税の通知が届くまでには時間がかかるかもしれません。また、所得税と同様に、住民税も本来の納期限を過ぎていれば延滞金が発生する可能性があります。。 - 【法人の場合】
法人の場合、税務署で行う修正申告は国税である法人税のみです。法人住民税(法人道府県民税・法人市町村民税)については、法人が、納税しているそれぞれの都道府県や市区町村に対して、個別に修正申告書を提出し直す必要があります。
税務調査後の修正申告では、多くの場合、法人住民税の本来の納付期限を過ぎているため、納付が遅れたことに対する延滞税(または延滞金)も発生することが一般的です。
このように、立場によって対応が異なります。ご自身の状況をしっかり確認し、適切な手続きを進めてください。
税務調査時の注意点と対策
税務調査の通知は緊張を伴いますが、事前の準備と当日の心構えで落ち着いた対応が可能です。調査に臨む際の注意点と対策を解説します。
余計なことは喋らない
調査官との雑談にも、帳簿外の情報を得る意図が含まれる場合があります。質問されていないことまで話したり、不確かな情報を伝えたりする必要はありません。虚偽の申告は厳禁ですが、余計な発言は調査を長引かせる可能性に留意しましょう。
把握していないことは言い切らない
過去の取引や財産の詳細など、即座に正確な回答が難しい質問には、曖昧な記憶や推測で断定的に答えるのは避けるべきです。誤った情報は不利益につながるため、「確認の上、後日回答します」と伝え、正確な情報に基づいて対応しましょう。
帳簿や領収書などの書類は事前にまとめておく
事業内容のヒアリング後、帳簿や証拠書類の確認が行われます。領収書、請求書、契約書などは事前に整理し、求められた際に速やかに提示できるように準備してください。書類の紛失があれば、調査当日までに可能な限り揃えましょう。書類管理が困難な場合は、税理士への相談も有効です。

まとめ
税務調査は、日頃からの正確な帳簿付けや書類の整理、そして何より誠実な申告がいかに大切かを改めて認識する機会となります。もし、「自分だけでは書類の整理が追いつかない」「税務の専門的な判断に自信がない」と感じたら、一人で抱え込まずに税理士のような専門家に相談することも検討してみてください。
ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。
投稿者プロフィール

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慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。
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