2025/5/27
税務調査が10年以上来ない会社と来る会社の違いとは?日頃からの対策も解説!
税務調査に対し、「うちは大丈夫か」「基準が分からず不安だ」と感じる経営者や個人事業主は多いでしょう。日々の業務に追われる中で、税務調査への不安は尽きないものですが、事業を続ける限り誰にでも起こり得るものです。
今回は、
- 税務調査の確率と頻度
- 調査対象になりやすい会社の特徴
- 日頃からできる対策
- 調査通知が来た場合の対処法
を解説します。
税務調査の確率と頻度のリアル
税務調査の実施確率
国税庁の公表データによると、近年の税務調査の実調率は以下の水準で推移しています。(※最新の正確な数値は国税庁の最新資料をご確認ください。)
- 法人:令和3事務年度 2.3%
- 個人事業主:令和3事務年度 0.9%
【参考】国税庁「令和3事務年度 法人税等の調査事績の概要」、国税庁「令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」など、最新の各事務年度の調査状況に関する資料をご参照ください。
この割合を見ると、法人は約40〜50社に1社、個人事業主は約100社に1社程度となり、生涯調査を受けないこともあり得ます。しかし、低確率でも税務調査は毎年実施されており、事業を続ける限り対象となる可能性は残ります。
税務調査の実施頻度
一般的な税務調査の頻度は以下の通りです。
- 法人の場合:およそ3年~10年に1回程度
- 個人事業主の場合:およそ5年~10年に1回程度
特に、創業から5年以上経過し、事業が軌道に乗った頃に対象となることが多いようです。
個人事業主の場合、実地調査がなくても、税務署から自主的な申告内容の見直しや修正申告を促される「簡易な接触」(書面や電話など)の可能性があります。日々の帳簿付けや証拠書類の保管は重要です。
【参考】国税庁が公表する「法人税等の調査事績の概要」などで「簡易な接触」の件数等が示されています。
税務調査の頻度に明確なルールはなく、会社の規模や業績、業種によって変動します。一般的に、税務署の業務が比較的落ち着く毎年9月〜11月頃に多い傾向があります。

税務調査が10年以上来ない会社と来る会社、その違いはどこにあるのか?
税務調査が長期間ない会社もあれば、比較的短い期間で調査を受ける会社もあります。ここでは、調査対象になりやすい会社や個人事業主の傾向を解説します。
「業種」による調査の入りやすさ
「自社の業界は調査が多い」と聞いたことがあるかもしれません。税務署は限られた人員と時間で効率的に調査を行うため、過去のデータや経験則から不正が見つかりやすい業種や申告漏れの金額が大きい業種を把握し、調査対象を絞り込んでいます。
国税庁の公表データによると、ある年度の法人税調査で不正発見割合が高かった業種には、バー・クラブなどの飲食店や廃棄物処理業、自動車修理業などが挙げられます。
また、個人事業主で申告漏れ所得金額が高額な業種には、風俗業、キャバレー、プログラマーなどが上位に来ています。(※これらは過去の一例で、年度により変動します。)
ご自身の業種がこれらのリストに該当する場合、より一層の注意が必要です。
売上の「大きさ」も関係あるか?
売上規模が大きいほど、税務調査の対象になりやすい傾向があります。
理由は、申告内容に誤りや不正があった場合、売上が大きいほど追徴税額も大きくなり、税務署にとって調査の優先度が高くなるためです。
また、税務署は業種ごとの平均利益率を把握しており、自社の利益率が同業他社より極端に低い場合や、急激な売上増減があった場合も「経費の水増し」や「売上隠し」を疑われる可能性があります。
「現金商売」は調査対象になりやすいか?
現金商売は、税務調査で不利になることがあります。
銀行振込と異なり、現金取引は記録が残りにくく、お金の流れが把握しづらいため、税務署から不正を疑われやすくなります。
特に、給与の現金手渡しやレシート・領収書の発行が少ない場合は、帳簿の正確性をより厳しく見られる可能性があります。
風俗業やバーなどが調査対象になりやすい背景には、この現金商売という点も関係しています。
そもそも税務申告していない
事業所得があれば、法人・個人を問わず税務申告は義務です。近年、税務署は無申告の取り締まりを強化しています。
「申告しなければバレない」というのは誤解です。税務署は、他の事業者の調査を通じて得た取引情報から無申告を発見できます。
特に多くの事業者から支払いを受けている個人事業主やフリーランスは、入金額を把握されやすく、無申告が見つかりやすいと言えます。
売上「1,000万円の壁」を意識しすぎると、逆に危ないか?
前々年の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生するため、これを逃れるために売上を過少申告するケースがあります。
しかし、これは典型的な脱税の手口であり、税務署も長年の経験から不正を見抜くノウハウを持っています。
毎年の売上が不自然に1,000万円ギリギリで推移している場合、税務署の疑念を招き、調査が入りやすくなります。誠実な申告が、結果的に最も安全な道です。

税務調査を避けるために!普段からできる「備え」とは?
税務調査の時期は予測できませんが、日頃からの準備でリスクを減らし、万が一の際にも落ち着いて対応できます。
ここでは、調査対象になりにくくするための4つの重要なポイントを解説します。
1.「無申告」や安易な不正は絶対にしない
「少しならバレないだろう」という安易な考えは禁物です。税務調査で最も厳しく見られるのは不正行為であり、特に無申告や意図的な過少申告は重大な問題と見なされます。
不正が発覚すれば、追徴課税や罰金だけでなく、事業の信用失墜や存続危機にも繋がりかねません。
正直な申告を徹底し、日々の取引を正確に記録し、期限内に確定申告を行うことが、税務調査リスクを減らす基本です。
2.「計上できる経費」をしっかり見極める
経費として計上できる範囲を正しく理解することは、節税だけでなく、税務調査リスクの軽減にも重要です。
不適切な経費計上は、税務署に「事業に必要な経費か?」と疑念を抱かせます。個人的な支出の混入や過大な経費計上は避けましょう。
「事業運営に本当に必要な支払いか?」という視点で冷静に判断し、迷ったら専門家に相談することも有効です。適切な経費計上は、税務署からの信頼に繋がります。
3.地道が一番!「日々の記帳」をコツコツ続ける
日々の正確な記帳は、税務署からの信頼を得るための基本です。
記帳は事業の「お金の流れ」を明確にし、税務署が「管理がしっかりしている」と判断する材料になります。
記帳を怠ると取引内容が不明確になり、不正を疑われるリスクが高まります。特に現金取引が多い業種や経費の種類が多い場合は注意が必要です。
会計ソフトなどを活用し、日々の記帳を習慣化しましょう。
4.「確定申告書」は丁寧に分かりやすく書く
確定申告書の書き方一つで税務署に与える印象は大きく変わり、調査対象になるかの分かれ道にもなり得ます。
確定申告書は事業の成績表であり、税務署への重要な報告書類です。不明瞭な記載は疑念を招き、調査のきっかけになります。
経費の内訳や大きな収入変動があった場合は、その理由や内容を具体的に記載するなど、丁寧な作成を心がけましょう。
税務調査の通知が来たらどう動く?
税務調査の通知が来た場合に、まず何をすべきか、具体的なステップを解説します。
税務調査の通知が届いたら、まず税理士に相談し、事前に入念な打ち合わせをする
調査の連絡が来たら、一人で悩まず、まずは税理士に相談しましょう。
顧問税理士がいる場合はすぐに連絡し、調査当日までに時間をかけて打ち合わせを行います。過去の申告内容の確認、税務署の注目ポイントの予測、当日の流れなどを共有し、対策を練ることが重要です。事前の準備が、当日の精神的な余裕に繋がります。
顧問税理士がいない場合は、臨時対応が可能な税理士を探す
顧問税理士がいなくても、諦める必要はありません。
税務調査のスポット対応をしてくれる税理士はいます。税務調査は専門知識や交渉術も求められるため、専門家の力を借りることは賢明な判断です。
調査時には誠実に対応し、不必要なことは口にせず、質問に的確に答える
調査当日は緊張するかもしれませんが、誠実な態度で対応することが最も重要です。
横柄な態度や隠ぺいを疑われるような素振りは、心証を悪化させ、調査が長引く原因にもなりかねません。
聞かれたことに対して、的確に、正直に答えることが基本です。不必要なことまで話す必要はありません。質問の意図を理解し、事実に基づいて簡潔に回答しましょう。すぐに答えられない場合は、「確認して後ほど回答します」と正直に伝えることが大切です。
残しておきたい書類は事前にコピーを取るなど、書類管理を徹底する
日頃からの書類整理はもちろん、調査の通知が来たら関連書類を改めて整理し、すぐに取り出せるように準備しましょう。
特に重要なのは、手元に残しておきたい書類は事前にコピーを取っておくことです。調査員が原本を預かることもあるため、控えを保管しておけば後々困りません。
税務調査は気が重いものですが、適切な準備と対応で乗り越えられます。この経験は、今後の経理体制を見直す良い機会にもなります。日頃から信頼できる税理士と連携しておくことが、事業を守る上で有効です。

まとめ
税務調査の確率や頻度、そして対象になりやすい会社の特徴について解説しました。
これらの情報を踏まえ、税務調査に対して過度に身構えるのではなく、自社が重点的に対策すべき点が明確になったかと思います。常日頃から税理士と対策をし、税務調査が入ったとしても今後のプラスに繋げられるようにしましょう。
ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。
投稿者プロフィール

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慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。
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