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2025/5/1

再就職手当は会社設立時にも活用できる?失業保険についても併せて解説!

「退職して起業したいけど、収入が心配…」

起業初期はどうしても収入が不安定になりやすいものです。資金面の不安を感じる方も多いでしょう。もしあなたが雇用保険の受給資格があるなら、知っておくと役立つ公的な支援制度があります。特に、「起業(事業開始)も再就職手当の対象になりうる」という点は、意外と知られていないかもしれません。
そこでこの記事では、起業を準備しているあなたが知っておきたい、失業保険と再就職手当について、以下の点を解説します。

  • 失業保険(基本手当)の基本的な制度と受給条件
  • 起業した場合に再就職手当がもらえるケースともらえないケース
  • 再就職手当の主な受給要件と計算方法
  • 事業開始で再就職手当を申請する際の手続き

【ご注意ください】
ここでご紹介する内容は一般的な情報です。実際の支給条件や手続きの詳細は、みなさんの状況や申請時期、管轄のハローワークによって異なります。事前にご自身の管轄ハローワークにご確認ください。

会社設立時に失業保険・再就職手当を受給できるケースもある!

これらの制度を活用するにはいくつかの条件や注意点があります。まずは基本となる失業保険(基本手当)について、あなたが受給できる条件を見ていきましょう。

失業保険(基本手当)の受給資格

失業保険(基本手当)を受給するには、以下の基本的な条件(雇用保険法等に基づく)を満たす必要があります。

  • 働くの意思と能力があること
    就職する意思があり、いつでも働くことができる状態であること。ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に求職活動を行うことが求められます。例えば、起業資金を貯めるためや、事業に必要なスキル習得のために一時的に就職を目指す場合も、就職の意思があるとみなされ、失業保険の対象になることがあります。みなさんの状況がこれに当てはまるか、ハローワークに相談してみてください。
  • 雇用保険の加入期間
    原則として、離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること。※※会社の倒産・解雇など特定受給資格者や特定理由離職者の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上ある場合でも対象となることがあります。

基本手当を受け取れる期間(所定給付日数)は、年齢や雇用保険への加入期間、離職理由によって90日~360日の間で決まります。1日あたりの金額(基本手当日額)は、離職前6ヶ月間の賃金のおよそ50%~80%(60歳~64歳は45%~80%)で、年齢ごとに上限があります。

こんな時は失業保険(基本手当)を受給できません

失業保険は「再就職を目指す方」を支援する制度のため、「今はちょっと就職の意思がないな」「別の活動に集中したいな」というような場合は、残念ながら対象外となってしまいます。

  • 働くことよりも、家事や学業に専念したいと考えている場合。
  • 既に次の会社の入社日が決まっているなど、就職先が内定・決定している場合。
  • 既に自分で事業を始めていたり、事業を開始するために他の就職活動をせず、準備に専念していると判断されるケース。
  • 法人の役員に就任している場合。(ただし、名義貸しだけで活動も報酬も一切ない、といった場合は例外となることもあります。)

事業開始(または準備専念)とみなされる主なタイミング

ハローワークが「この人はもう起業準備に集中していて、他の会社の求人は探していないな」と判断した場合、失業保険の対象から外れてしまいます。具体的には下記のような行動をとった時点から、「もう事業を始めたんだ」「準備に専念しているんだ」と見なされ、原則として失業保険の支給がストップされてしまう可能性が高くなります。

  • あなたが個人事業主として税務署に開業届を提出した
  • あなたが法人を設立し、会社として登記が完了した
  • あなたが事業用の事務所や店舗の賃貸借契約を結んだ

これらの行動を取る前であれば、例えば「起業資金を貯めるために一時的に就職したい」「事業に必要なスキルを身につけるために求職活動もしている」といった状況で、実際に求職活動をきちんと行っていれば、失業保険を受給できる可能性はあります。

再就職手当とは?受給要件や計算方法を解説

再就職手当とは?

再就職手当は、失業保険(基本手当)の受給資格がある方が、所定の条件を満たして基本手当の支給残日数を残して早期に安定した仕事に就いた場合、または事業を開始した場合に、残りの基本手当の一部を一括で受け取れる制度です。
雇用保険法では、この「安定した職業に就いた」というケースの中に、一定の要件を満たす「事業の開始(起業)」も含まれています。

再就職手当の主な受給要件とは?

再就職手当を受給するには、みなさんが以下の主な要件をすべて満たす必要があります。

  • 失業保険の受給手続き後、7日間の待期期間を満了した後に、事業を開始したこと。
  • 事業を開始した日の前日時点で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること。
  • 離職前の勤務先と、資本・資金・人事・取引などで密接な関わりがない事業を開始したこと。
  • 開始した事業を1年を超えて安定的に続けられると、客観的に認められること。
  • 過去3年以内に、再就職手当または常用就職支度手当を受け取っていないこと。
  • 失業保険の受給資格を決定する前から、事業開始の準備を進めていなかったこと(事業を行うことを決めていなかったこと)。

【給付制限がある方への注意点】
自己都合退職などによる給付制限(通常2ヶ月または3ヶ月)がある場合、待期期間満了後の最初の1ヶ月間に自分で事業を開始しても、原則として再就職手当の対象にはなりません。給付制限がある方が事業開始で再就職手当を受給するには、この最初の1ヶ月を経過した後に事業を開始する必要があります。

再就職手当の計算方法

さて、再就職手当の制度は分かったけれど、「結局、自分はいくらくらいもらえるんだろう?」というのが一番気になりますよね。
みなさんが受け取れる再就職手当の金額は、以下の計算式で決まります。(これは雇用保険法施行規則第83条などで定められています)

受給金額 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率

  • 基本手当日額
    これは、あなたの雇用保険受給資格者証に記載されている、1日あたりにもらえる基本手当の金額のことです(上限額があります)。この金額が大きければ、受け取れる再就職手当も増えます。
  • 支給残日数
    これは、あなたが事業を開始した日の前日の時点で、本来なら失業保険をもらえたはずの残りの日数のことです。日数が多く残っているほど、計算のもとになる数字が大きくなります。
  • 給付率
    あなたが事業を開始したタイミングで、この「支給残日数」がどれだけ残っていたかによって、掛けられるパーセンテージが変わります。(これも雇用保険法施行規則第83条で決まっています)
    もし残りの日数がもともともらえる日数(所定給付日数)の 3分の2以上 残っていたら? → 70% が掛けられます。
    もし残りの日数がもともともらえる日数(所定給付日数)の 3分の1以上 残っていたら? → 60% が掛けられます。

つまり、早く事業をスタートして、失業保険の残り日数がたくさん残っているほど、より高い給付率(70%)が適用され、再就職手当として受け取れる金額も多くなる可能性が高いんです! みなさんの受給資格者証を見て、残りの日数をご確認ください。

会社設立(事業開始)における再就職手当の申請手順

会社設立(または個人事業開始)により再就職手当を申請する場合の一般的な手順は以下の通りです。

1.離職票の受領とハローワークでの手続き

退職した会社から「離職票」を受け取ります。
住所地を管轄するハローワークで「求職申込み」を行い、失業保険(基本手当)の受給資格決定を受けます。

2.雇用保険説明会への参加と失業認定

指定された「雇用保険説明会」に参加し、雇用保険受給資格者証などを受け取ります。
指定された失業認定日にハローワークへ行き、「失業の認定」を受けます。

3.待期期間満了後の事業開始(会社設立等)

受給資格決定後、7日間の「待期期間」があります。この待期期間が満了した後に、事業を開始(会社設立の登記申請、個人事業の開業届提出など)する必要があります。待期期間中に事業を開始すると、再就職手当は支給されません。

4.事業開始の証明書類準備(法人設立の場合の例)

待期期間満了後、法務局へ法人設立登記を申請します。
登記完了後、法務局で「履歴事項全部証明書(登記簿謄本)」を取得します。
【個人事業主の場合】 税務署に提出した「開業届」の控え等が必要になります。

5.再就職手当の申請

事業開始日(法人設立登記日、開業日など)の翌日から1ヶ月以内に、ハローワークへ再就職手当の支給申請を行います。期限内に申請が必要です。

主な提出書類

  • 再就職手当支給申請書(ハローワークで入手)
  • 雇用保険受給資格者証
  • 事業を開始したことを証明する書類(例:履歴事項全部証明書、開業届の控え)
  • 事業の実態を確認できる書類(例:事業所の賃貸契約書、業務委託契約書、許認可証など、ハローワークが求める書類)
  • マイナンバーカード等の本人確認書類
  • 印鑑

※必要書類は個別の状況により異なる場合があるため、事前にハローワークにご確認ください。郵送での申請も可能です。

6.審査と支給

ハローワークで提出書類に基づき、支給要件を満たしているかの審査が行われます。事業の実態等について確認の連絡や追加資料の提出を求められる場合があります。
審査の結果、支給が決定されれば、指定した銀行口座に再就職手当が振り込まれます。(申請から支給までは通常1ヶ月~2ヶ月程度かかります。)

まとめ

起業準備を進めるにあたっては、失業保険や再就職手当といった公的支援制度を活用することで、資金面の不安を和らげ、より安心してスタートを切ることができます。制度を利用するにはいくつかの条件や手続き上の注意点がありますが、事前に確認し、計画的に進めることで、起業資金の一部として有効に活かすことができます。

こうした支援制度の活用だけでなく、起業や経営に関する悩みや課題をスムーズに解決するためには、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。

 

投稿者プロフィール

林 大樹(はやし ひろき)
林 大樹(はやし ひろき)
慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。