2025/4/28
税務調査が入る理由とは?調査対象になりやすい事業者の特徴と対策
経営者や個人事業主のもとに、ある日税務署から通知が届くことがあります。
その通知が税務調査に関するものであった場合、不安に感じる方も多いと思います。
しかし、税務調査は会計処理の適正性を確認するプロセスであり、必ずしも問題点を指摘することだけを目的とするものではありません。自社の会計や経理の状況を見直す良い機会と捉えることも可能です。そこで今回は、税務調査が行われる理由や特徴、事前の対策について説明します。

税務調査が入る理由とは?基礎知識と種類を解説
税務調査が入る理由
税務調査とは、提出された確定申告の内容が、税法に照らして適正であるかを確認するために行われる手続きです。これは、税負担の公平性を保ち、適正な課税を実現するために実施される重要なプロセスです。通常、調査は事前に連絡がありますが、特定の状況下では予告なく行われることもあります。調査の結果、申告内容に誤りが確認された場合は、修正申告とそれに伴う納税が必要となり、延滞税などが課されることもあります。このような状況を避け、税務リスクを管理するためには、まず税務調査が行われる背景や理由を理解することが大切です。
税務調査の種類は何がある?2種類の違いを解説
税務調査には、主に「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。
1. 任意調査
税務調査の多くを占める一般的な調査です。事前に日程調整の連絡があり、調査官が会社や事務所などを訪問します。確定申告書、帳簿、証憑書類などを確認し、申告内容の適正性を検証します。「任意」という名称ですが、税法上、納税者には調査に協力する義務(受忍義務)があり、正当な理由なく拒否することはできません。拒否した場合、罰則が科される可能性があります。
調査官は法律に基づく「質問検査権」を持ち、帳簿書類の提出要求や関係者への質問が可能です。通常、事前通知があるため、顧問税理士への相談など、必要な準備を行う時間があります。事前の準備は、調査当日の円滑な対応に繋がります。
2. 強制調査
一般的に「査察」と呼ばれ、任意調査とは性質が異なります。悪質な脱税の疑いが強い法人や個人を対象とし、裁判所の令状に基づいて行われます。納税者の同意は必要なく、令状に基づき、調査官(査察官)は事業所や自宅などに立ち入り、帳簿や書類、データなどを差し押さえる権限を持ちます。調査を拒否することは認められません。
査察の結果、悪質な脱税が認定された場合、追徴課税に加え、検察庁に告発され、刑事罰(罰金刑や懲役刑)が科される可能性もある厳しい手続きです。法令を遵守し、適正な申告納税を行うことが重要です。
税務調査では何がチェックされるのか?
1.銀行調査と反面調査
調査の主な項目の一つに、資金の流れの確認があります。
銀行調査
会社や代表者個人の銀行口座の取引履歴を確認します。税務署からの照会に対し、銀行は協力義務があるため、基本的に情報開示に応じます。代表者個人の口座も、事業資金と個人資金の区別が不明確な場合などに調査対象となることがあります。調査官は、口座の入出金記録と帳簿の内容が一致しているか、売上や経費の計上に漏れがないかなどを確認します。
反面調査
調査対象の会社だけでなく、その取引先に対しても行われる調査です。双方の帳簿や請求書・領収書などを照合し、取引内容や金額に相違がないかを確認します。例えば、一方の会社が計上した外注費と、相手方の会社が受け取った売上の記録に不一致がある場合、その原因について確認が行われます。
2.現物や商品在庫の確認
帳簿上の記録だけでなく、実際の資産状況も確認対象となります。
- 現金の残高確認
金庫などに保管されている現金と、帳簿上の現金残高が一致しているかを確認します。 - 固定資産の確認
事務所の備品や工場の機械などが、帳簿通りに存在し、管理されているかを確認します。商品・材料在庫の確認: 帳簿上の在庫数と実際の在庫数を確認します。両者に大きな差異がある場合、売上原価の計算に影響し、利益計上の適正性が問われる可能性があります。
その他、領収書、請求書、棚卸表、契約書、株主総会議事録なども、必要に応じて確認されます。調査官は主に「売上の計上(漏れや時期のずれ)」「在庫計上の漏れ」「経費計上時期の適切性」「架空経費の有無」といった点を確認します。これらの点に疑問が生じた場合、関連する資料や現物について詳細な調査が行われることがあります。

税務調査が入りやすい法人にはどんな特徴がある?
1.業績が順調で高収益を上げている
売上や利益が大きく伸びている、または安定して高収益を上げている法人は、税額も大きくなるため、申告内容の確認対象となりやすい傾向があります。特に、前年比で利益が急増した場合などは、その要因について注目されることがあります。
2.事前の確認で不自然な数値の原因が特定できない
税務署は提出された申告書や決算書を分析します。同業他社と比較して特定の経費が突出している、売上が伸びているのに利益率が急低下しているなど、数値に不自然な点があり、書類上だけでは合理的な説明がつかない場合、直接確認する必要があると判断され、調査に繋がることがあります。
3.提出書類と申告内容の間に食い違いがある
税務署は、申告書だけでなく、取引先から提出される支払調書など、様々な情報を照合して内容を確認します。例えば、自社が計上した支払額と取引先が申告した受取額に差異がある場合、計上の誤りなどが疑われ、事実確認のために調査対象となる可能性があります。
4.大口の貸倒れや多額の資産取得など特殊な取引がある
多額の貸倒損失の計上や高額な設備投資など、利益計算や納税額に大きな影響を与える取引があった場合、税務署はその処理の適切性や取得価額の妥当性などを確認する必要があると判断することがあります。判断が難しい取引や金額が大きい取引があった年度は、注目されやすいです。
5.過去の決算で不適切な会計処理が認められている
過去の税務調査などで会計処理に誤りや不適切な点が見つかっていた場合、その後の改善状況を確認する視点から、再度調査の対象となることがあります。指摘事項が正しく修正・運用されているかを確認する目的です。
6.過去の税務調査で多額の追徴課税があった
前回の税務調査で申告漏れなどが発覚し、多額の追徴課税があった場合、税務署はさらなる問題や指導内容の不履行を懸念する可能性があり、その後の状況を確認する目的で、再び調査対象となりやすい傾向があります。
7.監視対象となりやすい業種、または注目される企業である
税務署が「不正が起こりやすい」「取引実態を把握しにくい」として特に注目している業種(例:現金商売が多い業種、新興ビジネスなど)があります。また、メディア露出が多い、急成長した企業なども、実態確認の関心から調査対象になりやすいと言われています。
8.社外・社内からの通報や匿名の指摘が寄せられている
「不正申告がある」といった具体的な情報提供が、元従業員や取引先などから税務署に寄せられることがあります。匿名の情報でも、具体性・信憑性があると判断された場合、事実関係を確認するために調査が行われる可能性があります。
9.長期間にわたって税務署とのやり取りが行われていない
一定の事業規模がありながら、長期間にわたって税務調査が実施されていない場合、不正の疑いだけでなく、定期的な確認の一環として調査対象となることがあります。
10.消費税の還付申請をしている
輸出取引や大規模な設備投資などにより消費税の還付を申請する場合、税務署は還付請求の根拠を厳格に確認する必要があります。そのため、多額の消費税還付申請は、その内容を確認するための調査のきっかけとなりやすいです。

まとめ
税務調査は、自社の経理体制や内部管理を見直し、改善する機会と捉えることもできます。日頃の処理方法や記録に曖昧な点がないかなどを確認するきっかけになります。日頃から正確な税務処理と財務状況の把握を心がけることで、調査時にも適切に対応できます。税務調査への適切な対応は、企業の透明性や信頼性の向上にも繋がります。事前の準備や書類整理は、円滑な調査対応に役立ちます。
ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。
投稿者プロフィール

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慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。
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