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2025/4/25

会社設立前後にかかった費用(出費)は経費になるになる!それぞれの具体例も解説!

会社を立ち上げる時には、登記費用や事務所の準備、備品の購入などで何かと物入りですよね。こうした支出が「経費」になるかどうかを知っておくことは、会社の税金計算や資金管理の面でメリットがあります。
特に事業開始直後は、収入より支出が多くなりがちです。経費にできるものをきちんと計上することで、税金の負担を適正化し、会社の資金繰りを把握しやすくすることが、スムーズな経営に役立ちます。
この記事では、会社設立前後にかかる費用の「創立費」と「開業費」に注目し、その内容や経費計上のルール、注意点を解説いたします。

会社設立前後にかかった費用は経費になる?

会社設立前の費用は「創立費」として経費にできる

カフェでの打ち合わせ代、専門家への相談費用、書類作成のための印紙代…。
一つ一つは少額でも、積み重なると決して無視できない金額になりますよね。

実は、会社設立「前」にかかった特定の費用は、設立後の会社の経費としてきちんと計上できるのです。それが「創立費」と呼ばれるものです。

「創立費」とは、法律の言葉を借りれば『発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきもの』とされています。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、要は会社を立ち上げるために特別にかかった費用で、本来は「会社が負担すべきもの」と考えればイメージしやすいでしょう。

会社設立後から営業開始までの費用は「開業費」として経費にできる

多くの場合、登記完了から実際に顧客への商品販売やサービス提供を開始するまでには、一定の準備期間が必要となります。この「登記完了後から営業開始まで」の期間にも、事業をスムーズに立ち上げるためには、様々な費用が発生します。この期間に支出した費用のうち、特定の条件を満たすものは、会計上および税務上「開業費」として処理することが認められています。

開業費は、法律(法人税法施行令)で『法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用』と定義されています。この定義は、設立後から営業開始までの間に発生した費用のうち、どの範囲までを開業費として計上できるかを判断する際の基準となります。つまり、営業開始後の経常的な費用とは区別される、開業準備段階に特有の支出が対象となる、という考え方です。

創業費

創立費と開業費の具体例とは?

創立費の主な具体例には何がある?

創立費の具体例として、下記項目が挙げられます。

  • 定款作成や認証にかかった費用
  • 設立登記のための登録免許税
  • 司法書士や行政書士など専門家への報酬
  • 発起人が受け取る報酬
  • 設立事務所の賃借料
  • 打ち合わせのための飲食代や会議室代(会議費)
  • 手続きのための交通費
  • (設立準備のために雇った従業員への給与)

ただし、これらの費用を創立費として計上するには、絶対に「領収書」が必要です。
「まあ、いっか」と捨ててしまわず、設立準備に関わる領収書は日付と内容がわかるように、一枚一枚大切に保管しておきましょう。

とはいえ、注意点もあります。
例えば、設立準備の打ち合わせ費用だとしても、あまりにも昔(例えば1年、2年も前)の領収書となると、設立との直接的な関連性を説明するのが難しくなる可能性があります。
「いつ、何のために支払った費用なのか」を明確に説明できる、常識的な範囲内の期間の領収書を整理しておくことが重要です。

開業費の主な具体例には何がある?

開業費の内容は事業によって異なりますが、一般的には以下のようなものが挙げられます。
具体的に開業費として認められる主な支出例には、次のようなものがあります。

  • セミナーへの参加費や打ち合わせに要した費用
  • 事業に必要な免許や資格を取得するための費用
  • 文房具などの備品・設備の購入費やリース料
  • 開業資金を借り入れた際の利息
  • 書類作成や情報収集を目的とした通信費
  • 市場調査を行う際のガソリン代や交通費(電車・バス等)
  • 広告や宣伝にかかる費用

など

ただし、開業費の計上には注意が必要です。
重要なのは、準備期間中に支払った全ての費用が開業費として認められるわけではない、という点です。上記に挙げた例は、事業開始のための準備活動と直接関連するため、開業費と判断されます。

一方で、従業員を雇用した場合の給与や、事務所・店舗の家賃などは、たとえ営業開始前に支払いが発生していても、開業準備そのものとは区別されることが一般的です。
これらは、支払いが発生した期間に対応する費用として処理します。

また、備品の購入費についてですが、1つあたり10万円を超える高額なもの(パソコン、複合機、専門機器など)は、原則として「固定資産」となり、開業費には含められません。
固定資産は別途、定められたルールに従って経費化していくことになります。

さらに、販売する商品や製品の原材料といった「仕入」に関する費用も開業費とはなりません。
これらは販売されて初めて「売上原価」という費用になり、それまでは会社の「棚卸資産(在庫)」として扱われます。これらのルールを把握し、適切に経費を管理することが安定した資金計画の第一歩となります。

会計上の繰延資産とその償却

会計上の「繰延資産」とは、既に代価の支払いが完了(または支払義務が確定)し、対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現すると期待される費用を指します。(参考:企業会計基準適用指針第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」)

具体例として、会社の設立に要した費用である「創立費」や、設立後から事業を開始するまでの準備期間に発生した費用である「開業費」が挙げられます。これらは、会社設立や事業開始という将来の事業活動に貢献する効果を持つと考えられるため、原則として支出時に全額費用処理するのではなく、会計上の繰延資産として資産計上されます。(参考:企業会計原則注解15)
このように資産計上された繰延資産を費用として計上(償却)する方法について、会計上のルールと税法上のルールでは異なる点があります。特に、税法上「任意償却」が認められる繰延資産の範囲と方法がポイントとなります。

1. 会計上の取扱い

会計上は、繰延資産の種類に応じて、その効果が及ぶと考えられる期間にわたり、費用を適切に配分するという考え方(費用収益対応の原則)に基づき償却を行います。
例えば、創立費は会社成立後5年以内、開業費は事業開始後5年以内の、それぞれの効果が及ぶ期間にわたって、毎期均等額以上を償却することとされています。(参考:企業会計原則注解15) 開発費など他の繰延資産についても、それぞれの会計基準等に基づき償却期間や方法が定められています。

2. 税法上の取扱い(任意償却が認められる繰延資産)

一方、法人税法においては、会計上の繰延資産の一部について、その償却(損金算入)を行うタイミングや各期の償却額を、企業が任意に決定することが認められています。これを「任意償却」といいます。
任意償却の対象となる主な繰延資産は以下の通りです。(これらは会計上の繰延資産に含まれるものです)

創立費
開業費
開発費
株式交付費
社債発行費等
(参考:法人税法施行令第14条第1項第一号~第五号、法人税法施行令第64条第1項第一号)

これらの繰延資産については、支出した事業年度以降であれば、任意の事業年度において、任意の金額(支出額が上限)を損金として算入することが可能です。

税法上の繰延資産に関する補足

法人税法上の繰延資産には、上記で挙げた任意償却の対象となるもの以外にも、様々な種類があります(例:公共施設の設置に伴う負担金、建物を賃借するための権利金など)。これらは、法人税法独自の繰延資産として扱われるものも多く、任意償却は認められず、原則としてその効果の及ぶ期間に応じた均等償却など、別の償却ルールが定められています(参考:法人税法施行令第14条第1項第六号以降、法人税法施行令第64条第1項第二号)。
この記事では、主に任意償却が可能な繰延資産(創立費、開業費、開発費など)の税務上の取扱いを中心に説明しています。

任意償却の活用について

税法上で任意償却が認められている繰延資産(創立費、開業費、開発費など)を活用することにより、例えば、事業が安定し利益が多く計上された年度に合わせてこれらの費用を損金算入することで、その年度の課税所得を抑える調整が可能になります。これは、結果としてその年度の法人税等の納税額に影響を与える可能性があります。

会計上は一定のルール(5年以内の均等額以上の償却)に従って費用計上を行いますが、税務申告においては、創立費・開業費に関しては任意償却を選択できるため、企業の利益状況に応じた柔軟な損金算入計画を立てることが可能です。この税務上の取扱いを正しく理解し、計画的に活用することは、企業のキャッシュフロー管理や税負担の最適化において有効な選択肢の一つとなり得ます。

税金

まとめ

今回は、会社設立前後にかかる費用の「創立費」と「開業費」について、その内容や経費計上のルール、注意点を解説いたしました。設立準備や開業準備にかかった費用の多くが、ルールに沿って処理すれば経費として認められます。そして、その経費化のタイミングをある程度コントロールできる点は、特に利益が安定しない創業期において、税負担を最適化するための武器となります。

そのためにも、まずは設立準備段階から領収書を保管し、何のための支出かを記録しておく習慣をつけることが重要です。もちろん、経理や税務のルールは複雑な部分もあります。もし判断に迷ったり、より最適な処理方法を知りたい場合は、税理士などの専門家に相談することも有効な手段です。

ALBA税理士法人は静岡市にて、公認会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士がタッグを組んだ総合事務所です。当事務所があらゆる問題解決の窓口となり、ワンストップで解決いたします。経営に関する懸案事項をなんなりとご相談ください。

投稿者プロフィール

林 大樹(はやし ひろき)
林 大樹(はやし ひろき)
慶応義塾大学商学部卒
延べ100社以上の経営改善業務に従事。資金繰りに悩む多くの会社を支援する中で、会社の経営が傾く原因の共通点に気づく。 現在では、会社の経営が傾く前の予防策が大事だと考え、それをなるべく早い時期から伝えるため、会社設立を含めた起業家支援に注力している。